鈴木宏枝『アフリカン・アメリカン児童文学を読む-子どもの本という「励まし」』青弓社、2022年2月。

 

<青弓社サイトより>

紹介

奴隷制度や人種差別などの苦難の歴史を抱えながら、抑圧された環境下でも協働して人間らしく生き延びようとした強さに光を当てることで、現代を生きる子どもに新たな視点と励ましを与えるアフリカン・アメリカン児童文学がもつポテンシャルを描き出す。

 

解説

拉致、奴隷化、尊厳の剥奪、隔離、共同体内での分裂など、複雑で艱難辛苦の連続だった歴史をもつアフリカン・アメリカンが書く児童文学は、多様性の希求やルーツの受容、他者との連接を目指してきた。社会的に「見えない」子どもの感情を可視化し、抑圧された環境下でも協働して人間らしく生き延びようとした集団の強さを描く作品は、あらゆる子どもへの「励まし」の役割も担う。

 

 

 

 

目次

序 章 アフリカン・アメリカン児童文学と「励まし」

 1 アフリカン・アメリカンとは誰か

 2 アフリカン・アメリカン児童文学とは何か

 3 「励まし」としてのアフリカン・アメリカン児童文学

 4 本書の構成

 

第1章 アメリカのなかの他者

 1 『アンクル・トムの小屋』にみる隷従

 2 『アンクル・リーマスの話』にみるミンストレル・ショー

 3 アメリカ児童文学の黒人

 

第2章 アフリカン・アメリカン児童文学の輪郭

 1 アフリカン・アメリカン児童文学の歩み

 2 自伝や伝記の意義

 

第3章 「ブラウニーズ・ブック」の意義

 1 W・E・B・デュボイスの教育観とハーレム・ルネサンス

 2 アメリカの子ども像の多様化に向けて

 3 アフリカへの親近感――「中間航路」の逆走

 

第4章 「わたしには夢がある」への応答

 1 人種隔離の手枷と人種差別の足枷――『とどろく雷よ、私の叫びをきけ』

 2 われらの白人の兄弟――『ミシシッピの橋』

 3 アメリカの夢に深く根差した夢――『土地』

 

第5章 歴史の受容

 1 墓石による防御――『偉大なるM・C』

 2 虐待と病の受容――『マイゴーストアンクル』

 3 神話の創造――『プリティ・パールのふしぎな冒険』

 4 南部の鎮魂――『犂を打ち鳴らす』

 

第6章 ネットワークの形成

 1 奴隷逃亡のネットワーク――『ハリエット・タブマン――地下鉄道の車掌』

 2 ストリート・チルドレンの共同体――『ジュニア・ブラウンの惑星』

 3 ハーレム地区の共助と新しい男らしさ――『ニューヨーク145番通り』

 

第7章 言葉の力

 1 アフリカの言葉に宿る力――「すべて神の子には翼がある」

 2 複数の言葉から生まれる空間――『次女――ある奴隷少女の話』

 3 詩作でつながる若者――『ブロンクス・マスカレード』

 

おわりに――アフリカン・アメリカン児童文学というプラットフォーム:子どもを跳ばせる力

引用文献一覧

コレッタ・スコット・キング賞受賞作一覧

初出一覧

あとがき

 

Reflections on Our Relationships with Anne of Green Gables. Carniel, Jessica and Nike Sulway eds., Cambridge Scholars Publishing, July. 2021.

 

1. Kindred Spirits: Reflections on our relationship with Anne of Green Gables (Jessica Carniel & Nike Sulway)

2. 'There is So Much More Scope for the Imagination': Reading Anne as 1980s Children in Canada and Australia (Lisa Bennett & Kylie Cardell)

3. In search of a Bosom Friends: Remembering My Kindred Spirits Pen Pal (Christina Collins)

4. Anne Shirley and Hanako Muraoka: The Relationship between the Character and her Translator in Japan (Hiroe Suzuki) p.27-41.

5. From Anne to An(ne)other: The True-Life Account of Two Annes (Anne Betz)

6. Picturing Anne's Puffed-Sleeve Dress: Colour, Belonging, and Wish Fulfilment in Anne of Green Gables (Sabrina Mark)

7. Anne through the Looking Glass (Monique Mulligan)

8. 'It's a million times nicer to be Anne of Green Gables than Anne of nowhere in particular, isn't it?': Reading Anne by the Brown, Dusty Banks of the Murray River (Megan Mooney Taylor)

9. 'My red hair is a curse': Growing Up Red-headed with Anne of Green Gables (Emily L. Newman)

10. HIgher Education of Women and the Lasting Popularity of Anne of Green Gables in Japan (Kazuko Sakuma)

11. 'Just as if I Was a Heroin in a Book': Quixotic Identification In and With Anne of Green Gables (Julie A. Sellers)

12. 'A Graveyard Full of Buried Hopes': Rethinking Realism and Romance in Anne of Green Gables and Rilla of Ingleside (Rebecca Sheridan)

13. Owen, Leslie, ANne, Maud: Writing the Self in Four Winds Harbour (Jessica Friedman)

14. Reading Anne of Green Gables in the Twenty-First Century: Anne with an E and Queer Ecofeminist Fanfiction (Meghna Christina Mudaliar)

15. Re(ad)-writing Anne: Participatory Internet Fan Activities as Textual Negotiation (Emily MOhabir)

16. Anne as Pagan, Anne as Queer (Dallas John Baker)

17. Anne with a Me: Adapting to New Adaptations of Anne as She Adapts to Us (Jessica Carniel)

金原瑞人、ひこ田中監修『10代のためのYAブックガイド150!2』ポプラ社、2017年11月

 

<ポプラ社サイトより>

★YAブックガイド150!とは?

10代(中高生)の読者のために、過去7年間に刊行された本だけを、本の専門家が計150冊選ぶブックガイド『今すぐ読みたい! 10代のためのYAブックガイド150!』シリーズの第二弾です。

 

★どんな本が載ってるの?

選書の条件は「10代(中高生)の読者にすすめたい、2011〜2017年刊行の本」のみ! 日本と世界のYA最新小説をはじめ、エッセイ、コミック、絵本、ノンフィクション、詩集、歌集、写真集など幅広いジャンルにわたり、10代だけでなく大人世代も、きっと「刺さる」本があるはずです。

★だれが本をすすめているの?

監修は前巻にひきつづき、YA英米文学翻訳の第一人者であり、書評も多く執筆している翻訳家・金原瑞人さんと、児童文学作家で評論家としても活躍しているひこ・田中さん。そのほか、作家、書評家、翻訳家、研究者、図書館司書、書店員、詩人、歌人、ブックデザイナー、ライターなど、いろいろな立場の「本のプロ」25人が本の紹介を担当。自ら選書した本を「絶対読んでほしい!」という思いで紹介しています。

金原瑞人監修『12歳からの読書案内―多感な時期に読みたい100冊』すばる舎、2017年5月。

 <すばる舎サイトより>

本書は国内・海外を問わず、中高生の年齢層を対象としたYA(ヤングアダルト)の名作を100冊紹介しています。物語、ライトノベルに始まり、批評や哲学、詩に至るまで、幅広いジャンルの本を選んでいます。一気にめり込む面白い本、深く考えさせられる本など、多感な時期に読んでおきたい本を厳選! 専門家オススメの選書に触れ、本の世界の面白さ、奥深さを体験してみてください。

 

1章 毎日が葛藤の連続だから  「一歩踏み出す勇気をくれる本」

2章 とにかく面白い本を読みたい!  「空想の世界に羽ばたける本」

3章 不条理な世界で、どう生き抜く? 「試練を乗り越える力をくれる本」

4章 根源的な問いを持つ  「じっくり読んで自分を深める本」

5章 答えはひとつじゃない! 「新しいものの見方に触れる本」

6章 こころの深いところがジンとする 「ことばの力に感化される本」

 

 

金原瑞人、ひこ田中監修『10代のためのYAブックガイド150!』ポプラ社、2015年11月

 

<ポプラ社サイトより>

 

YA英米文学翻訳の第一人者であり、書評も多く執筆している翻訳家・金原瑞人さんと、児童文学作家で評論家としても活躍しているひこ・田中さんの監修による、10代に読んでもらいたい本を集めたブックガイド。

2009年〜2015年に刊行された作品の中から、国内、海外を問わず、最新のYA本150冊を収録。ジャンルは、小説、エッセイ、コミック、絵本、ノンフィクション、詩集、歌集、写真集など実にさまざま、10代だけでなく大人世代も読みたくなる本が、たっぷり掲載されています

執筆は、監修の2人のほか、作家、書評家、翻訳家、研究者、図書館司書、書店員、歌人、ブックデザイナー、ライターなど、いろいろな立場の「本のプロ」25人が担当。自ら選書した本を「絶対読んでほしい!」という思いで紹介しています。

 

野上暁編著『いま、子どもに読ませたい本‐子どもの感性をゆたかにするブックガイド』七つ森書館、2014年3月。

 

<七つ森書館サイトより>

「生きる」とは? 「家族」とは? 「友だち」とは? 「戦争」とは? 「差別」とは?

テーマ別に構成した、日本の児童文学のブックガイドです。

日本ペンクラブ「子どもの本」委員が選んだ、時代をこえて読みつがれる名作ぞろい。

子どもの感性をゆたかにし、考える力が身につけるための101の物語です。

教科書採用作品も数多く紹介、朝の読書、読み聞かせ、読書感想文にも最適です。

 

101冊のうち、『へんてこもりにいこうよ』『ふるさとは、夏』など20冊を担当させていただきました。江戸川乱歩から荻原規子まで幅広く、戦争や核など社会派が多いのも特徴です。主要項目は「幼い子の文学」「生きるということ‐命を考える」「家族とは何か?――親子・きょうだいへのさまざまな思い」「いろいろな友だち――学校・友だち・遊び」「平和への願い――戦争とその時代から」「描かれたヒロシマ・ナガサキ――核被爆国からの証言」「社会に向けた目――貧困・差別・自由へのまなざし」「ファンタジーと冒険――不思議な世界への旅」

神宮輝夫、髙田賢一、北本正章編著『子どもの世紀‐表現された子どもと家族像』ミネルヴァ書房、2013年7月。

 

<ミネルヴァ書房サイトより>

 英米児童文化と教育の社会史に現れた子どもと家族像を、総合的・文化誌的にとらえた、‹驚き›に満ちた新しい子ども文化論。社会にとって永遠のテーマである子どもと家族。本書はそれらを文学、絵画、アニメ、漫画、映画や教育・家族・子ども論など多様な角度から総合的・歴史的にとらえ直した画期的な文化史である。専門家だけではなく、子どもと家族に関心をもつ一般読者の知的好奇心に応える書。

 

第1章 子ども空間の社会史的変貌‐遊びと学びの文化変容(北本正章)

第2章 映像化から環境化へ‐ファンタジーの生むハイパーリアリティ(井辻朱美)

第3章 動物物語と家族‐現代的意義と可能性(髙田賢一)

第4章 ヴィクトリア朝絵画の<家族/聖家族>を読み解く‐ミレイの「両親の家のキリスト」を手がかりに(久守和子)

第5章 政治的保守主義と教育的革新主義のあいだ‐サラ・トリマー再評価論をめぐる一考察(岩下誠)

第6章 ヴィクトリア時代の家庭教育と女子教育‐「家庭の天使」像の揺らぎと親子関係(香川せつ子)

第7章 死と復活の物語‐キリスト教ファンタジーの子ども像(成瀬俊一)

第8章 『小公女』における家族の肖像‐理想・虚構・現実(川端有子)

第9章 <家族>を求め続けた天才魔法使い‐J・K・ローリングの<ハリー・ポッター>シリーズ

第10章 カナダ作家が描く家族‐キット・ピアソンの『やさしい騎士』をめぐって(白井澄子)

第11章 多様化する家族‐子育てする少年たち(鈴木宏枝)

第12章 ドナ・ジョー・ナポリ作品の母娘像‐昔話を現代化するということ(横川寿美子)

第13章 ヒラリー・マッカイ作<カッソン家>シリーズの理想と現実‐芸術一家の変化をたどる(西村醇子)

第14章 秘密のキスは誰のもの?‐映画『ピーター・パン』(2003年)が描く家族(水間千恵)

第15章 仮面の下に潜むもの‐カニグズバーグと少女アンネ(島式子)

第16章 少女の描くファンタジー‐<ウィーツィ・バット>シリーズにみるポストモダン・ファミリー(吉田純子)

あとがきにかえて (神宮輝夫)

白井澄子、笹田裕子編『英米児童文化55のキーワード』ミネルヴァ書房、2013年3月。

 

英語圏の子どもたちは、社会の中でどのような生活をしているのだろうか。

衣食住・教育からおもちゃや遊びまで,具体的なモノ・コトを幅広く取り上げ,1キーワードを4頁でわかりやすく解説。子どもを取り巻く文化的状況を総合的に把握できる一冊。


  ◎ 1キーワードを4ページでわかりやすく解説し,関連する図版を3~4点掲載
  ◎文化的側面から総合的に児童文学を扱った本邦初 の書
  ◎ 「英語圏文化論」「児童文学概論」など,講義用のテキストとして最適

 

4: 兄弟・姉妹・一人っ子」「20: 友だち・いじめ」「52: 学校物語」を書かせていただきました。

吉田純子、鈴木宏枝、大喜多香枝『マイノリティは苦しみをのりこえて‐アメリカ思春期文学を読む』冬弓舎、2012年3月

 

現代アメリカのヤングアダルト文学のなかでも、特に人種や時代的貧困を背景にした「ハイフン付きアメリカ人」の子どもを主人公した作品を選んで論じました。狭いところを突いていますが、特殊な経験と思えるその背後にあるメッセージ性や生きることの肯定は、逆に普遍性を豊かに持ち得ていると思います。「苦難の超克」をキーワードに、彼らのなかに希望を見出し、サバイバルしていく姿に敬意を払い、そのプロセスを様々なアプローチで読み解いています。

 

 

 

 

 

 

第1章 「ウキヨ」の土着化‐シンシア・カドハタの『七つの月』(吉田)

第2章 韓国系家族の挫折と自立‐アン・ナの『天国までもう一歩』(鈴木)

第3章 コミュニティをもとめて‐リンダ・スー・パークの『モギ‐ちいさな焼きもの師』(吉田)
第4章 チカノの子どもの本におけるラ・ジョローナ伝説 ‐パトリック・ユースタスの『チョーティト』(鈴木)

第5章 視覚がもたらす死の受容―アンジェラ・ジョンソンの『犂を打ち鳴らす』(大喜多)
第6章 ポストコロニアルな目ざめ‐ローザ・ギィの『友だち』(吉田)
第7章 アフリカ系アメリカ人少女の成長と言葉の力‐ヴァジニア・ハミルトンの『プリティ・パールのふしぎな冒険』

   (鈴木)
第8章 19世紀女性主人公の「幸運なる堕落」‐キャサリン・パターソンの『ワーキング・ガール―リディの旅立ち』

   (大喜多)

第9章 「傷ついた癒し人」との出会い‐キャサリン・パターソンの『テラビシアにかける橋』『星をまく人』(吉田)

 

野上暁、ひこ・田中編『子どもの本ハンドブック―きっと読みたくなるおすすめ本500冊』三省堂出版、2009年7月

 

評論家でペンクラブ理事の野上暁さんと作家&評論家のひこ・田中さんを中心に、翻訳家の三辺律子さん、神戸万知さん、私の5人ですべて選書、執筆した児童書のガイドブックです。大まかに「絵本」と「読み物」に分けたあと、「家族・親子」「いろいろな友だち」「遊びと冒険」などのテーマで切って紹介しました。

 

どの本にも1~3個の★がついています。

★:自分で本を読めるようになった子どもから楽しめる本

★★:ちょっと進んで読者が能動的に内容に関われる本

★★★:いろいろな読み方ができ、様々に考えさせられる本

 

おおむね年齢とリンクするのですが、簡単に見える絵本でも★★★のものもありますし、シンプルな幼年童話なら絵が少なくても★になっていたりします。アヒルマークは「文字を読めない子どもを対象として作られ、読み聞かせでも楽しめる本」なので、ファーストブックにふさわしい赤ちゃん絵本などが入ります。どうぞ参考にしてみてください。

 

500冊を選ぶ過程はとても刺激的でした。比較的新しい本も多く、編集会議の中で新しく知って「おもしろいなあ」と思った本もあります。東洋英和や村岡花子の世界をつい思い浮かべてしまう『大正野球娘。』は、ひこさんのおすすめでしたが、じつにおもしろかった。名作や古典だけでなく「バムとケロ」シリーズや『おへそのあな』など、自分の体験的基盤のある絵本たちをたくさん入れられたのも収穫で、林明子さんだったら『はじめてのおつかい』ではなく『はじめてのキャンプ』が入っています。今、本を読む子どもたちと、子どものために本に関わる大人の皆さんにとって少しでもヒントになれば幸いです。

上原里佳、神戸万知、鈴木宏枝、横田順子『ほんとうに読みたい本が見つかった―4つのキーワードで読む児童文学の「現在」セレクト56』原書房、2009年6月

 

 スローにじっくり読ませるタイプのブックガイドです。神宮輝夫先生の監修なく、われわれだけで選んで作るにあたり、これまで先生のご意向で入れることのできなかった『ツバメ号とアマゾン号』『ウォーターシップダウンのウサギたち』『シェパートン大佐の時計』などの御訳書をやっとこさ入れることができました。もちろん新しいものもばっちり入っています。前作から5年が経って、その間に刊行された様々な「おもしろい」「考えさせる」「深い」本たち。選んでは読み、読んでは議論し、自分の読みをじっくり書けたことはとてもありがたく、シリーズで4冊も出たことは誇りです。『トラベリングパンツ』『夜のパパ』『肩甲骨は翼のなごり』『ジャック・デロシュの日記』『シェイクスピアを盗め!』『ノエルカ』…。どうぞ本書も、ご紹介作品も、たっぷりお楽しみください。

川端有子・西村醇子編『子どもの本と<食>‐物語の新しい食べ方』玉川大学出版部、2007年1月30日。

 

2年越しの白百合プロジェクトの論文集を上梓しました。Food for Thought(思考の糧)という名前のプロジェクトで、児童文学や絵本と<食>の関係を論じた8本と3本のコラムが収録されています。子どもを対象とした児童文学や絵本では、<食>は教育学のメタファーとなり、あるいは反抗のあかしとなり、あるいはカルチュラルアイデンティティのアイコンにもなります。作家の無意識があらわれる部分であるからこそ、<食>がおもしろい。

 

はじめに  <食>と子どもの本のおいしい/危険な関係    (川端有子)

①絵本と幼年文学を食べる

●「お皿洗いを手伝っていただける?」―絵本に描かれた<食> (浅木尚実)

●みんなで食べると楽しいね―幼年文学と<食>の関係     (佐々木由美子)

コラム:古風なアパートの優雅な食卓             (西村醇子)

 

②古典をもう一度味わう

●『砂の妖精』における<食>の役割―ファンタジーと現実のはざま          (永島憲江)

●空腹の少女たち、満腹の少女たち―『小公女』と『秘密の花園』における<食>の意味 (川端有子)

●ベジタリアンになったドラゴン―ローズマリー・マニングのR・Dの場合       (山本麻里耶)

コラム:卵の味                                  (西村醇子)

コラム:雑煮、プリン、ホットケーキの正体                     (川端有子)

 

③児童文学に新しい調理法

●魔法使いの食卓と大地に根ざすモモの木―<食>から読む<アースシー>シリーズ   (鈴木宏枝)

●コンデンスミルクの魔法の力―M・モーパーゴの物語技法としての<食>       (内藤貴子)

コラム:イギリス人と魚(※イギリス児童文学の中で扱われている魚)         (西村醇子)

 

おわりに  新たな始まりへ                            (西村醇子)

もう少し食べたいひとのために―お奨め独断ブックリスト

(カテゴリー:遊びと食/飲食と身体/飢餓と飽食/儀式としての食/擬人化された食べもの/教育と食/食からわかる時代と地域/食を通じたコミュニケーション/食をめぐる諸問題/捕食関係〔食う/食われる〕

金原瑞人監修『12歳からの読書案内 海外作品』すばる舎、2006年12月。

 

1章【「感動」して心がじんわりする本】

2章【「どう生きるのか」を真剣に考えたくなる本】

3章【「試練」を乗り越えるヒントになる本】

4章【「元気とガッツ」にあふれる本】

5章【「ファンタジーの面白さ」が凝縮されている本】

6章【発想がユニーク! 珠玉の「短編集」】

7章【危険なくらい「想像力」が刺激される本】

 

監修:金原瑞人、執筆者:あさのあつこ、位頭久美子、三辺律子、鈴木宏枝、宝田茂樹、豊崎由美、東直子、ひこ・田中、平岡敦、光森優子、森絵都、大石和大、尾上操代、穂坂理紗子、星野公俊、細野晃広、増住雄大、渡邉かおり

 

YAにも子供にも大人にも読んでもらいたい海外のYA100冊が紹介されています。私が書いたのは『私が売られた日』『イクバルの闘い-世界一勇気ある少年』『スカイラー通り19番地』『ニューヨーク145番通り』『モイシェとライゼレ』『チューリップ・タッチ』の6本です。他にも、『草花とよばれた少女』『ザッカリー・ビーヴァーが町に来た日』『シカゴよりこわい町』『穴』『おわりの雪』『肩甲骨は翼のなごり』『アグリーガール』など、大好きな作品が山盛り入っています。どの書評も、さすがの読ませる力と、その作品への愛情が伝わってくるもの。私自身も、とても楽しく読んでしまいました。

 

ほとんどが、ここ10年以内に出版されたみずみずしい作品であることもポイントです。「翻訳」というフィルターをくぐりぬけて本になっている各国の作品がおもしろくないはずがありません。読んだ方の一歩先の読書体験への道しるべになれば、執筆に参加した者としてこれ以上の喜びはありません。


ものによっては、子どもは親に隠れ、親は子どもに隠れて、こっそり読むべき本もある。読書というのは元来、危険なものなのだと思う。つきつめれば、「生・死・愛」しかない。いや、「性・狂気」も追加しよう。
そのわくわく、はらはら、ぞくぞくする感触は親や子どもとは恥ずかしくて共有できないこともある。いっしょに読むなら友だちや恋人という本だ。そのへん、お間違いのないように。 (「あとがき」より)

 

The Oxford Encyclopedia of Children's Literature, Jack Zipes editor in chief, Oxford University Press, 2006.5

 

4巻本の児童文学百科事典です。『おとぎ話が神話になるとき』や『赤頭巾ちゃんは森を抜けて―社会文化学からみた再話の変遷 』で有名なジャック・ザイプス氏編で、Jamake Highwater, Mamoru Suzuki, Rudolfo Anaya, Tinker Bell(日本イギリス児童文学会の紀要)など7項目を担当しました。アマゾン・ジャパンの画像はカバーつきになっているのだと思いますが、私が手に入れているバージョンは、オールコットの写真、The Cat in the Hatのネコ、センダックのかいじゅうなどが配された、とても楽しい表紙です。

神宮輝夫監修『世界児童文学百科 現代編』原書房、2005年9月。

 
『オックスフォード世界児童文学百科』の補版となる「現代編」の事典です。私は編集委員だったほか、大項目「リアリズム」と、小項目「デヴィッド・アーモンド」「ジュマーク・ハイウォーター」「ヴァジニア・ハミルトン」「ジェシー・ジャクソン」「ニッキ・グライムズ」「フィリップ・プルマン」「アーネスト・ゲインズ」「アーノルド・エイドフ」「ミルドレッド・テイラー」「ウォルター・ディーン・マイヤーズ」「ジェイムズ・コリアー」「ジャニ・ハウカー」を担当しました。

 

 

 

 



<推薦のことば> 
出口保夫氏(早稲田大学名誉教授) 
『世界児童文学百科―現代編』の刊行は、これまでどこの国にも見られない画期的な試みであるばかりでなく、読み物としてもたいそう内容の濃い本である。この「百科」は、イギリス児童文学の第一人者である神宮輝夫さんが編者であり、たとえば10頁にわたる「ファンタジー」の項目ひとつを読むだけで、この本の面白い魅力とレベルの高さがわかる。21世紀の児童文学の動向を知る上で、これほど実りが多く、頼りがいのある本はほかにはないだろう。

野上暁氏(児童文学評論家) 
邦訳作品だけからは知ることができない世界児童文学の現代が、おびただしい数の作家と作品を通して眺望され、その多様さと豊饒さには圧倒される。しかも、それぞれが作家論作品論としても面白く読ませるところが最大の魅力だ。英米をはじめ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの歴史と現況の概観や、ファンタジー、リアリズム、ヒスパニックなどの大項目も充実している。日本の現状を考える上でも、大いに刺激的で貴重な一冊である。

金原瑞人氏(翻訳家)
辞書・事典のたぐいは、出た瞬間すでに時代遅れになっている。だから今でもよく使われている有名な『オックスフォード世界児童文学百科』なんか、「時代遅れだぞ」といわれはじめてもう20年もたっている勘定になる。しかしようやく、この事典が出た。内容的には現在望みうる最高の事典といっていい。が、なによりうれしいのは、日本人の日本人による日本人のための『世界児童文学百科』になっていることだろう。これは日本人の財産である。

レファレンスとしては必携であるのと同時に、「推薦のことば」にあるように、「つい読みふけってしまうおもしろさ」がポイントだと思います。

井辻朱美監修・ふたつのプロジェクト編『児童文学における<ふたつの世界>』てらいんく、2004年11月20日
◆英語圏の児童文学における<ふたつの世界>の変遷/浜名那奈
◆幻想とノンセンスのはざまで―ウォルター・デ・ラ・メアの描いた人間たち/八代華子
◆老女になった少女の変身が意味するもの―ダイアナ・ウィン・ジョーンズ『魔法使いハウルと火の悪魔』/岸野あき恵
◆「えん」と「秘密」によってつくられるもうひとつの世界

  ―伊藤遊『えんの松原』とF・H・バーネット『秘密の花園』の比較/井上みよ
◆ペネロピ・ライブリにおける記憶と時間―『トーマス・ケンプの幽霊』を中心に/林祐子
◆『ジョイ・ラック・クラブ』に見る母と娘のふたつの世界/野口摩利亜
◆アフリカ系アメリカ人作家の捉える<ふたつの世界>

 ―ミルドレッド・テーラーとヴァジニア・ハミルトン/鈴木宏枝
◆<ふたつの世界>の世界/間宮史子
◆<ふたつの世界>はどこへ行くのか?/井辻朱美

3年間のプロジェクトの成果(私が参加したのは最後の1年だけでしたが)となる論文集が出ました。<ふたつの世界>が照らし出す児童文学の現在を考えています。様々な切り口がクロスするところに、児童文学のおもしろさが見出せます。舟崎克彦先生による装丁もとても素敵。私は、ヴァジニア・ハミルトンのM.C.Higgins, the GreatTime Pieces、テイラーのRoll of Thunder, Hear My CryThe Landを取り上げて、アフリカ系アメリカ人児童文学の「ふたつの世界」を考えました。

浅井清・佐藤勝編『日本現代小説大事典』明治書院、2004年7月

 

児童文学の作家・作品項目の中で、「はなはなみんみ」物語シリーズ―わたりむつこ、『夏の庭―the friends』―湯本香樹実、「おさる」シリーズ―いとうひろし、『黄色い目の魚』―佐藤多佳子、『兄弟いとこものがたり』―吉田甲子太郎、『天使で大地はいっぱいだ』―後藤竜二、『木馬がのった白い船』―立原えりか、『ジロウ・ブーチン日記』―北畠八穂、「夕焼けの雲の下」―川崎大治 を担当。

黒沢浩・砂田弘・広瀬恒子・佐藤宗子・中多泰子・宮川健朗編『新・こどもの本と読書の事典』ポプラ社、2004年4月。

ポプラ社サイトより

 

「総合的な学習や読書の時間が積極的に実施されているこどもの現場を考え、こどもからおとなまでの児童文学に関するあらゆる事項に答えうる総合的な事典。」

 

人名、作品名などの項目の一部を執筆しました。

神宮輝夫・早川敦子監修『歴史との対話-十人の声』近代文芸社、2002年4月。 

(日本図書協会選定図書)

 

いま、歴史が語りはじめる‐歴史を見つめる児童文学作家たち

 

人間、特に子どもの基本的人権の確立をめざす流れは、従来の子どもの文学で表現されてきた子どもと大人の関係、子ども像、大人像などを変え、いわゆるジャンルなども従来の概念が通用しにくくなった。

『歴史との対話―十人の声―』は、これからの歴史小説・物語の可能性をさぐる試みである。

「歴史」をキーワードに個々の作家論から子どもの文学の可能性まで考えていった論文集。
白百合女子大学児童文化研究センタープロジェクトの成果です。

 

 

巻頭言                               神宮輝夫

 

第1部  大地の声と<わたし>

1章 歴史化される「ヴィジョン」(J・ハイウォーター)       鈴木宏枝

2章 越境する民族・文学・歴史(G・ソト)             神戸万知

3章 記憶を紡ぎだす夢想・物語(P・ライトソン)          宮崎麻子

4章 交感する時間のドラマツルギー(A・ガーナー)         内藤貴子

5章 時間の記憶・個の記憶(P・ピアス)              林祐子

 

第2部  心の声と<わたし>

1章 奪われた過去、再生される記憶(L・ローリー)         増田珠子

2章 内なる歴史、内なる場所(トポス)(M・マーヒー)       森上めぐ美

3章 歴史の中の入れ替わり、一人の中の入れ替わり(P・ファーマー) 浜名那奈

4章 自分を語り、現在(いま)を語る(A・ファイン)        澤田澄江

5章 私と世界の「あいだ」を超えて(P・プルマン)         渡辺佳子

 

第3部  世界の声と<わたし>

1章 「歴史小説」から見た児童文学――読みに開かれる地平      西村醇子

2章 「歴史」との対話――物語が拓く地平              早川敦子

 

あとがきにかえて                          早川敦子

 

 

神宮輝夫監修、上原里佳、横田順子、鈴木宏枝、神戸万知『だから読まずにいられない‐5つのキーワードから読む児童文学の【現在】新セレクト53』原書房、2000年11月。

 

<原書房サイトより>

『エルマーのぼうけん』から『カモメに飛ぶことを教えた猫』まで、海外20世紀児童文学からよりすぐった著者いちおしの「おもしろい本」が目白押し。最近作の魅力もつめこんで、名作もフレッシュな視点から紹介。矢川澄子さん推薦!!

 

神宮輝夫監修、上原里佳、横田順子、鈴木宏枝、神戸万知『ほんとうはこんな本が読みたかった‐児童文学の現在セレクト57』原書房、2000年2月。

 

<原書房サイトより>

『星の王子さま』から『豚の死なない日』まで、20世紀の海外児童文学から大人が読んで面白い作品を紹介! 子どもたちがのびのびしていた懐かしい時代から今のリアルな世界まで、大人と一緒に変わってきた子どもたちの現在を読む。